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エネルギー基本計画(案)へのパブリックコメントを提出しました

第6次エネルギー基本計画(案)が経済産業省資源エネルギー庁より示され、2021年10月4日(月)までパブリックコメントが公募されていました。生活クラブ神奈川からも、下記の意見を提出しました。

第6次エネルギー基本計画(案)に関する意見

神奈川県横浜市港北区新横浜2-2-15 パレアナビル5F
生活クラブ生活協同組合
理事長 篠崎 みさ子

1.意見該当箇所 全体
<意見内容>
地球温暖化への対策は喫緊の課題である。また2011年の未曾有の被害をもたらした原発事故の教訓も踏まえた2050年カーボンニュートラルの実現に向けた対策を望む。
< 意見の理由>
1)2050年カーボンニュートラル の実現に向け、2030年の温室効果ガス削減目標2013年度比46%の削減、更に50%の高みに向けて挑戦を続けていくという事が表明されています。
今回のエネルギー基本計画(案)では、この新たな削減目標の達成に整合する電源構成案が求められています。
2)再生可能エネルギーを2050年における主力電源として最大 限の導入に取り組むとして記したことは評価しますが、原子力発電の目標を実現不可能な前回と同じ 20~22%に据え
置いたこと、火力発電を41%、特に石炭火力発電を19%と残したことは、これまでの古い考え方の政策を踏襲したものとなっており、見直しが必要です。 神奈川県では横須賀市に大
規模石炭火力発電所の建設がすすめられ、2050年目標に対し矛盾する計画が進行しています。
3)子どもたちの未来に地球を残すため、気候危機を回避するために、世界が一丸となり取り組むべき2050年カーボンニュートラルに向けた今できる対策として、 再生可能エネル
ギー100 %に向けた政策を英断すべきです。

2.意見該当箇所 P7・204~P10 1. 東京電力福島第一原子力発電所事後の10 年の歩み
<意見内容>
東京電力福島第一原子力発電所事故から10年が経過したが、汚染水の処理、廃炉の処理は見通しが立っていない。被災地の現状は真の復興にはほど遠い。この点は次期エネルギー基
本計画では基本認識の上に策定すべき。
<意見の理由>
1)東京電力福島第一原子力発電所の事故により約1万4,000㎢の大地が放射能で汚染され 、「原子力緊急事態宣言」が解除されていません。
2)ALPS処理水の海洋放出も計画され、大地のみならず海洋汚染までにも広がろうとしています。汚染水の海洋放出は風評被害のみならず実害にもつながります。9/13の報道で、ALPSで排気中の放射性物質を吸着するフィルターが25ヶ所中24ヶ所で破損していたことが明らかになり、また2年前にも25ヶ所すべてで破損の事実を東電は当時公表せずに部品を交換し再発防止策も講じていなかったとの報道がありました。事実を隠す原子力発電事業の体質への抜本的対策を講ずるべきです。
3)厳格な安全性の担保、政府一丸となって行う風評対策の徹底をうたっていますが、起こる現実を見据え、前文の削除を求めます。
4)更に、浜通りの自立的な産業発展という名のもとに事業・なりわいの再建として「福島イノベー ション・コースト構想」が原発関連企業、首都圏の企業が参入してすすめられようとしています。 地元に活力を取り戻し、地域の自立をすすめ、持続可能な地域社会の再生を進める上での障害になる計画は真の復興計画とは言えません。着実な廃炉と、汚染を広げない対策をすすめ、地域の再生の土台作りとすべきです 。

3.意見該当箇所 P34(1096~1100)
原子力は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。
<意見内容>
原子力発電はリスクだけです。即刻止めて廃止すること。
<意見の理由>
1)気候変動対策は再生可能エネルギーへのシフトこそが重要です。リスクしかない原発は即刻廃止するという政策を示すべきです。
2)原子力の電源構成は前回と変わらず約20 ~22 %に据え置かれました。今回の計画案では、「安全を最優先し、・・・可能な限り原発依存度を低減する(757~759)」と明記されています。一方で、「CO2の排出削減に貢献する電源(3575)」とし、「規制委員会により・・・規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進め(3577~3579)」としています。しかし福島第一原発事故では、いまだ2万2千人の避難者がおり、ALPS処理水の海洋放出問題など終息とは程遠いものです。
3)また、核廃棄物の最終処分に対しても、「③対策を将来に先送りせず、着実に進める(2222)」としていますが、火山国の日本で最終処分場建設については全くめどが立っていません。
4)この電源構成20~22%を実現するには、現在までに稼働申請をした27基の原発をすべて動かすことが必要です が、 これまでに再稼働した原発は10基に留まって います。その中には60年運転の許可を得なければならない老朽化原発も含まれ、誰が見ても実現不可能な計画です。国の基本計画としては「本気」が疑わしいものとなっています。
5)しかも原発の再稼働については 、2011年の原発事故を経験している国民の同意は得られていませんし、今後も同意を広げられるはずはありません。
6)一部の利益のための原子力政策は即刻廃止すべきです。

4.意見該当箇所 P17・534-547 3.エネルギー政策の基本視点(S+3E)の確認
<意見内容>
エネルギー政策の基本視点としてのS+3Eの順番はS(安全性)を前提とした上で環境への適合(Environment)、安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)の順位とすること。
<意見の理由>
1)エネルギー基本政策の国民の健康と文化的な生活を確保することが重要であり、この視点に沿った計画が必要です。したがって安全性(Safety)の次には、今日の世界的な気候危
機の状況、発電所の立地地域の問題などを踏まえ、環境への適合(Environment)、安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)の順位で計画すべきで
す。

5.意見該当箇所 P24・721 (3)電力部門に求められる取り組み
<意見内容>
2030年再生可能エネルギーの電源構成60%以上、2050年100%を目標とすること
<意見の理由>
1)今回の計画で「2050年における主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組む」ことが明記されました。
2)しかし、IPCC(気候変動における政府間パネル)による「1.5℃特別報告書」では、地球温暖化を1.5℃に抑制するための2030年の電力に占める再生可能エネルギーの割合を、「60 %」としています。諸外国の2030年時点での再生可能エネルギー導入目標も、ニュージーランド100%、スペイン74 %、ニューヨーク州70%、ドイツ65%、カリフォルニア州60%など、高く設定されています。
3)2030年に60%以上にすること が、 2050年カーボンニュートラルを実現するためには必須条件であり、2050年には再エネ100%と主力電源化とする目標設定を方針化してくださ
い。

6.意見該当箇所 P71・2325-2376 b)核燃料サイクル政策(ア)再処理やプルサーマル等の推進
<意見内容>
核燃料サイクル、再処理、プルサーマルは即時廃止すべき
<意見の理由>
1)原子力発電については、すべての判断の大前提として安全の確保と国民の理解が最優先されるべきです。S+3Eは原発が稼働している限り実現できません。
2)原子力発電の運転コストが低廉とありますが、核廃棄物の処理、廃炉のコストまで加えると決して低廉ではありません。さらには2011年の原発事故がお金で解決できない危険性をはらんできることを証明しています。
3)もんじゅの廃止、六ヶ所村の再処理工場は稼働しないまま30年が経過しています。核燃料サイクルは完全に破綻しており、再処理もプルサーマルも即時廃止することが必要です。
4)原子力発電の運転コスト、核廃棄物の処理問題、原発事故のリスクから、早急に原発廃止の判断をすべきです。

7.意見該当箇所 P54・1731 ③系統制約克服に向けた取組
<意見内容>
最優先すべきは再生可能エネルギーです
<意見の理由>
1)再生可能エネルギーを主力電源とするために、変動性再エネの割合の増加に電力システムの「柔軟性」の拡大を基本の考え方とすべきです。ベースロード電源を優先するルールや
補助は撤廃し、EUなみの「再エネ優先接続・優先給電」を基本とするべきです。

8.意見該当箇所 P75・2458 (7)火力発電の今後の在り方
<意見内容>
石炭火力発電は、2030年にすべての運用停止すること
<意見の理由>
1)現在、神奈川県横須賀市に石炭火力発電所の建設が進行し2023年稼働が予定されています。2050年カーボンニュートラルに逆行しています。即刻計画の撤退をすべきです。
2)今回の計画案では「できる限り電源構成に占める火力発電の比率を引き下げることが基本(2471)」としながらも、石炭火力を19%程度利用(3552・3588 )するとしています。非
効率な石炭火力をフェーズアウトし、高効率にするとしていますが、高効率のUCS(超々臨界)や次世代技術とするIGCC(石炭ガス化複合発電)やIGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)でも、 CO2排出量は非効率とほとんど変わらず、LNG火力の 1.7倍~2倍のCO2を排出します。
3)地球温暖化のスピードは年々進行を早めています。さらなる気候危機を回避し、1.5℃の気温上昇抑制することは時間との戦いであり、そのためにも石炭火力は2030年までに全廃し、その他火力も段階的に廃止しなければなりません。(株)JERAがすすめる横須賀市に建設する石炭火力発電所は第3次エネルギー基本計画に基づく事業であり、時代遅れの計画です。
4)二酸化炭素分離回収貯蔵(CCS)や二酸化炭素分離回収利用 (CCU)の技術の推進に力を入れていることが多く記載されていますが、CCSの実施にはCO2を十分に貯留するための盤石な地層が必要ですが日本の国土は活断層が多く走る地震多発地帯であり、数百年~千年といった長い間に安定的に貯留することに適した土地が少ない。また、CCSを導入したとしても CO2排出量がゼロになるわけではありません。世界的にも技術的にも確立していないものを計画化するのは、石炭火力を継続するための言い訳です。
5)以上の観点から石炭火力発電の2030年の全廃と現在神奈川県横須賀市ですすめられている石炭火力発電所計画の即刻撤廃を求めます。

9.意見の該当箇所 P92(3092~3094)(11)エネルギーシステム改革の更なる推進
①脱炭素化の中での安定供給の実現に向けた電力システムの構築に向けた取り組み

<意見内容>
透明性に欠ける法的分離方式の「発送電分離」から「所有権分離」の発送電分離の実施をすべき。
<意見の理由>
1)現状は既存電力会社や既存電源への配電が目立ち、発電分野でも小売分野でも旧一般電気事業者が有利な状況になっています。大手電力会社の会計分離、発電と販売の分離、送電
事業の所有権分離と将来的な統合をすすめ、再エネや新規事業者が公正に競争できる環境を整備すべきです。
2)健全な市場競争を促進し新規参入者を増やすことは、新たなエネルギーシステムを構築する前提条件です。

10.意見の該当箇所 P75(2481)(7)火力発電の今後の在り方 容量市場により中長期的に必要な設備容量を確保する。
<意見内容>
老朽火力やベースロード(原発含む)の補助となる容量市場を廃止すること。
<意見の理由>
1)容量市場は、すでに建設費などが回収済みの発電所をたくさん持っている大手電力の既得権益で大手に極めて有利な仕組みです。火力発電を温存するための仕組みでもあります。また約定総額が極めて高く、消費者の大きな負担になります。
2)容量市場は、そもそもの必要性から制度設計にわたって多くの問題があります。容量市場の制度そのものを凍結し入札を停止して、改めて制度設計を根本から再検討することを求めるとともに第6次エネルギー基本計画に盛り込むべきです。

11.意見該当箇所 P95(3227~3231) 2023年度に託送料金制度を見直し、レベニューキャップ制度を導入、発電側課金制度の円滑導入
<意見内容>
託送料金は、送電に関する費用を明確にして透明性を担保し、託送に関係ない費用を託送料に上乗せすることをやめること、また発電側課金制度の導入をやめること
<意見の理由>
1)原発の廃炉負担金や賠償負担金など、送電に関係ないものを託送料として上乗せし、新電力含めた小売会社、消費者に負担させるのは問題を見えづらくします 。 廃止してください。
2)託総料金を収入上限で送電会社が自由に決められる新たなレベニューキャップ制度(2023年)の導入に反対します。
3)発電側課金制度は、すべての発電所において設備容量に対する一律の基本料金(1,800円/kW・年)を発電事業者が新たに負担することになります。設備利用率が比較的低い太陽光や
風力の事業が既存の化石燃料の発電設備よりもより不利になり、再エネ普及の足かせになりますので反対します。

12.意見該当箇所 P93(3143~3147)
非化石電源由来の電気が有する環境価値を取引する非化石価値取引市場について、現行の高度化法上の小売電気事業者への脱炭素電気の調達義務や負担との整合性にも留意しつつ、トラッキング付き証書の大幅な増加、需要家による購入可能化やグローバルに通用する形で取引できる再エネ価値取引市場の創設などを含めた制度全体の抜本的な見直しを行う。
<意見内容>
公正な競争環境整備を原則として、消費者が自由に再エネ電力を選べるように現在の非化石証書を改め、再エネ証書と原子力証書に分離すること、すべての電力小売事業者に実績値による電源構成表示を義務付けること。
<意見の理由>
1)現状、証書なしの FIT 電気は産地価値、特定電源価値を表現できなくなり、非化石証書を購入しないと価値を表現できません。証書購入は新電力のコストアップとなります。
2)一方で火力や原子力でも証書を購入して供給すれば、「実質再エネ」または「CO2ゼロエミッション電気」として供給でき消費者にはわかりにくく選択しづらくなります。

13.意見該当箇所 P124・4195 7.国民各層とのコミュニケーションの充実
<意見内容>
情報公開と市民参加を促進する積極的な政策を求めます。市民がエネルギー政策に積極的に参加できる仕組みづくりや場の設置などの検討を求めます。
<意見の理由>
1)エネルギー政策は多くの国民、市民にとって健康で文化的な生活を営むための土台であり、大きな関心事です。これまでの供給者中心のエネルギー政策から消費者、需要者サイドを重視した市民参加の政策へと転換していくことが必要です。
2)専門的な内容をわかりやすく広く、市民に情報開示してください。知らない間に省令だけで特定の企業だけが利益を得るような政策決定やルール変更をやめてください。
3)市民がエネルギー政策に積極的に参加できる仕組み をつくり、透明性の高いエネルギー政策の構築、そのためのわかりやすい情報開示を促進すべきです。第 6 次エネルギー基本計画にて方針化してください。

以上


【2021年10月7日 掲載】

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