TPP批准・関連法案の強行採決に対する見解
衆議院TPP(環太平洋連携協定)特別委員会での実質審議が充分に尽くされていないなか、11月4日に委員長職権で開催された特別委員会でTPP承認(批准)案と関連11法案の採決が強行され、与党(自民党・公明党)と日本維新の会の賛成多数で可決しました。11月10日には衆議院本会議でも可決され、参議院に送付されました。
私たちはこの間、食と農・暮らし・生命そして地域を守るために、この国の将来を大きく左右するTPPに反対する意見を表明してきました。現在、「TPP協定を今国会で批准しないことを求める緊急署名」(「TPPを批准させない!全国共同行動」が呼びかけた国会請願署名)にも取り組んでいます。それ故、TPPについて、情報公開と実質審議を避けようとする政府与党による国会運営のあり方に反対します。参議院での性急な審議・採決が繰り返されぬよう求め、以下のとおり見解を表明します。
1. きちんと情報公開されず、国民的な議論も合意形成もないまま、批准すべきではありません。
・共同通信社が10月末に実施した世論調査では、TPP承認案・関連法案について、「今国会で成立させるべきだ」は17.7%、「成立させる必要はない」が10.3%、「今国会にこだわらず慎重に審議すべきだ」が66.5%の結果となりました。世論の大半は、慎重審議を求めています。
・また、協定全文の翻訳がなされないまま、協定全文を読んだ国会議員がほとんどいない状況で批准しようとする国会のあり方は異常です。ましてや、ISDs条項、自治体を含む政府調達の規定、国営企業の扱い等について、充分な説明が行われていません。
・米国をはじめ交渉参加12カ国を見渡しても、慌てて批准しようとしている国は日本の他にありません。きちんと情報公開されず、国民的な議論も合意形成もないまま性急な審議・採決によってTPPを批准すべきではありません。
2. なぜ、環境や平和、民主主義をおろそかにして慌てて批准しようとするのでしょうか?
・今国会では、急ぐべきパリ協定(2015年の国連・気候変動枠組条約締約国会議で締結)の批准審議よりも、米国大統領選挙前に間に合わせるとしてTPPの批准審議を優先してしまった結果、11月7日に開会した同会議(COP22)への正式参加が間に合わないという国際的な失態を演じました。また、国連総会(第一委員会)で10月27日に「核兵器禁止条約」の交渉開始決議案が賛成多数で採択されましたが、日本は唯一の被爆国でありながら米国などとともに反対票を投じ、国内外から多くの批判・疑念の声が寄せられました。
・ しかし、日本政府の思惑に反して米国の大統領選に勝利したトランプ氏は、TPPに反対しており年内の米議会でのTPP法案提出は確実に難しくなっています。
・ これはまさに、日本政府のグローバリズム一辺倒の新自由主義経済への追従と対米従属の外交姿勢であり、その結果は米国のTPP批准の年内見送りという見苦しいほどの日本外交の失敗です。その上で、TPPの衆議院での可決は、環境や平和をおろそかにし、国民の民意を踏みにじる暴挙です。
3. TPPは日本の地域社会の土台を破壊する恐れの強い協定だと言わざるを得ません。
・TPPは、政府が「食料・農業・農村基本計画」で掲げている「自給力向上」政策に反しており、食料安全保障政策を放棄するものだと言わざるを得ません。また、日本における農業は「農業」というビジネスとしてだけ存在している訳ではなく「農村」「農民」一体として存在しています。TPPによる日本の第一次産業および関連産業の壊滅的な打撃は、地域社会の崩壊を導き出します。それは、中山間地農業や小規模家族農業を淘汰し、民間資本の導入による大規模農業化へ農政をシフトしようとする政府の狙いであり、TPPでめざす農政のあり方と表裏一体であると言えます。現在進められている農協改革という名の農協規制も生乳指定団体制度や飼料用米制度などへのこれから強まるであろう見直しも、この文脈のなかにあります。さらなる価格破壊・規制破壊・生産破壊によって、全国の志ある生産者ならびに自覚的消費者が、この国にますます存在しにくくなります。
・食料・農業問題に限らず、地域経済(金融、保険、医療など)に広範に与える悪影響も深く懸念されます。日本の地域社会の土台を破壊する恐れの強い協定です。
・政府・与党はTPPなどをつうじて、この国を対価無しにどころか“お土産”付きで米国そして多国籍資本へ売り渡そうとしていると言わざるを得ません。
4. 以上の理由から、私たちはあらためて、TPPの批准について反対を表明します。
生活クラブ生活協同組合・神奈川
理事長 藤田ほのみ