えぽ18年1・2月号特集①枝元さんと藤田理事長の対談(web版)

生活クラブ神奈川機関紙「えぽ」紙面にスペースの都合で掲載できなかった部分(「子育て中のお母さんへ」の項目)を追加したものをweb版として公開します。

「えぽ」2018年1・2月号 2-3ページ掲載
特集①
「食」からつながろう!

食べ物にはどんなチカラがあると思いますか?単純に栄養が摂れるだけではなく、場を和やかにしたり、何を食べるか選ぶことで社会を変えたりする力があります。今回は料理研究家の枝元なほみさん生活クラブ神奈川理事長の藤田ほのみさんとの対談で、「食べる」ことについて考えます。

●食べ物の持つ力

枝元:私、基本的に人のことが好きなんです。できればみんなで仲良くやっていきたい。でもね、たくさんの人が集まっていっしょにやっていくって難しくないですか?

藤田:たしかに生協に加入している人は様々で、幅が広いです。でも、生活クラブはオリジナルの「消費材」をみんなで食べているという部分でつながっていて、「同じ釜の飯を食べる」という意味での近さがあります    

枝元:「食べる」って人と人をつなぐ力がありますよね。誰かと話すとき、お茶が1杯あるかないかで全然違う。昨年9月にビッグイシューカフェという1日限定カフェの準備で、NPO法人BONDプロジェクト※の女の子たちとクッキーを作りました。最初目を合わせなかった女の子が、「高校の文化祭ってこんな感じかな?」と明るい気持ちになってくれました。

藤田:おいしいものをいっしょに作ったり食べたりすると自然に笑顔になって、場が和やかになる。食べ物の持つ力ってすごいですね。

●子育て中のお母さんへ

枝元:以前、14時からのテレビ番組の撮影でスタジオに呼ばれたんです。そのとき、“オートロックのマンションで、泣いている赤ちゃんの傍らでお母さんが1人でテレビを見ている”様子を想像しちゃって、なんだか胸が苦しくなってしまいました。

藤田:昔は近所の人が色々構ってくれて、みんなで子育てをしていました。でも今は様子が違うようですね。子どもに食べさせるものも、細かいことまで悩んでしまったり…。

枝元:誰かの指示がないと、安心できない・判断できない人が増えてしまったのかしら。

藤田:賞味期限とか、何グラム食べさせなくちゃいけないとか、数字を気にしすぎているようにも思います。

枝元:数字がない食べ物はどうするの?サバイバルできないよ!って思っちゃう。3.11(東日本大震災・福島第一原子力発電所の事故)のとき「原発怖い!おかしいと思う」とツイッターでつぶやいたりすると、「勉強してこい」って言われた。でも、専門家ってその人の立場で言うことが違うと身を持って知りました。あの事故を経験して、「どうやって生きていくのかは自分で考えて決めていくんだ」と思ったの。

藤田:お母さんたちも、いわゆる専門家が言うことに振り回されず、目の前の子どもの様子に合わせて自分で判断することに自信を持ってほしいですね。

●食べ物が「商品」でいいの?

枝元:今、多くの人は「消費生活文明」に慣らされちゃって、「お客様」になっちゃってる。みんな「安い・うまい・新商品」といった言葉に弱い気がするんです。メディアに左右される価値基準でいいの?って思うの。

藤田:私は実家が農家で、醤油や味噌も自家製でした。ある程度、家にあるもので食事が作れたんです。でも今は、農産物や水産物といった第1次産品までも、売るための「商品」として流通していますよね。

枝元:売る方は「商品」を買ってほしいから、耳触りのいい言葉しか言わない。安心・安全ってどんな風に?どこでどうやって作られたんだろう?消費者は、何も考えなくても安心・安全なものが手に入るって刷り込まれがち。

藤田:作り手と買い手が分断されてしまっているから、そうなってしまうのでしょうね。生活クラブは設立50年になろうとしていますが、その間ずっと、「商品」ありきの経済に対して、もう一つのありかたを追求してきました。取り扱い品を「消費材」と言っているのも、「売って儲けるためのもの」ではなく「消費するためのもの」として生産者といっしょに作ってきたからです。

枝元:ペースダウンというか、一度立ち止まって、自分たちが大切にしたいこと・ものを考えて、選んでいかないとね。待ってても進まないですよね。

藤田:例えば生活クラブの「消費材」には、組合員と生産者が大切にしたい思いや願いが込められています。「消費材」を注文あるいはデポーで購入して食べるだけで、不要な添加物や遺伝子組み換え※2(GM)作物は食べたくない!という意思を示すことにつながっています。

●暮らしの感覚を大切に

藤田:生活クラブは、一人ひとりの組合員の「これは嫌だな、こうだったらいいのに」という声を集めて、協同して(おおぜいの意思を束ねて)解決することを運動としてすすめています。誰かに任せて諦めるのではなく、声をあげ続けています。

枝元:物事を決めるとき、大きな単位で決まることって“任せるしかない”って思っちゃう。だけど、周りの人達との小さな単位でできることもたくさんありますよね。暮らしの感覚で何か変だぞ・嫌だなって感じたら『おかしいんじゃない』って言っていくことが大切ですよね。

藤田:GM作物について、「国が許可しているのに、何を反対しているの」と言われることがあります。でも、除草剤をかけても枯れないようなものを私は食べたくないし、そういう感覚を大事にしたい。ある組合員が、「自分1人が嫌だなと思ってもどうにもならないけど、生活クラブの組合員みんなでGM作物は食べたくないって言い続けることで、エサや原材料までGM作物を使わないことが実現できている、それってすごいことですよね!」と言っていました。

枝元:断然すてきだと思う!私、最近は誰にも忖度しないで「あ、言っちゃった」という感じで思ったことは言うようにしています。おばちゃんになったからできるようになりました(笑)はみ出すのが怖いとか、空気を読むって言いますけど、場の空気を自分たちでつくろう!って思うの。

藤田:周りを気にしすぎないで自分から一歩踏み出してみるのが大切ですね。「これ、おいしいよ」って消費材を身近な人に食べてもらうだけでも大きな一歩だと思います。

枝元:3.11以降、共に食べる・共に生きるということを肝に銘じています。「食べる」を共通項にして、意見の違う人同士も穏やかに会話できる関係、多様な人々がゆるくつながっていける世の中にしていきたいですね。

藤田:生活クラブには気軽に話せる場があり、世代や地域を越えた仲間がたくさんいます。これからも「食べる」ことをきっかけに、様々なこととつながっていける生協でありたいです。

※1NPO法人BONDプロジェクト:10代20代の生きづらさを抱え居場所を失った女の子の自己肯定観向上や自立に向けて、女性による支援を行う団体。

※2遺伝子組み換え(GM:Genetically Modified):他の生物の遺伝子の一部を切り取って、自身の遺伝子に組み込む技術。この技術によって、虫が食べない、除草剤で枯れない、といった作物が開発され、人々が口にしている。


料理研究家 枝元なほみさんプロフィール

劇団の役者兼料理主任から無国籍レストランのシェフとユニークな経歴の持ち主。テレビや雑誌で活躍するほか、農業支援の社団法人「チームむかご」の代表理事であり、ホームレスの自立を支援するNPO法人ビッグイシュー基金の理事も務める。生活クラブ連合会が毎月発行している『生活と自治』にて「エダモンとティータイム」を連載中。

主な著書:「西原理恵子と枝元なほみのおかん飯」シリーズ(毎日新聞出版)、「今日もフツーにごはんを食べる」(芸術新聞社)など。

 

藤田ほのみ(生活クラブ神奈川 理事長)

1993年生活クラブ加入。さがみ生活クラブ厚木コモンズ組合員。

 

 

 


「えぽ」は生活クラブ神奈川の機関紙です。隔月(奇数月)に発行し、全組合員に配布されています。
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2018.01.19掲載

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