2016年参議院選挙に向けた生活クラブ神奈川としての政策提案

<参議院選挙に向けた声明>

 2016年7月に行われる参議院選挙は、選挙権が18歳に引き下げられます。選挙制度にとって歴史的な選挙となりますが、私たちの身近な生活においても歴史的に大きな転換点を決める選挙になると考えます。
 多くの国民が関心を寄せた「安保関連法案」の実行の可否や憲法改正が俎上に載せられ、生活に根ざした多くの国政課題(TPPと食、農業の問題やエネルギー政策、社会保障、福祉など)を国民一人ひとりが選択することになります。
 生活クラブ生活協同組合・神奈川は、今まで食料の自給力の向上と食の安全を求める運動。東京電力福島第一発電所事故による環境・地域破壊に直面して「エネルギー消費を減らす」「自然エネルギーをつくる」「エネルギーを選択して使う」を目的として独自の電力会社の設立。地域で「人」の関係性を基本としたたすけあいの豊富化、福祉と医療、住居との連携、社会的な弱者・困窮者が地域で共に暮らせる「地域包括ケアシステム」構想の実現。地域づくりや地域で人と人の関係性が豊かになる働き方、また「生命」を基本においた働き方を通じて共に生きる地域社会づくりを基本とした働く場の創出を目指し、「食・エネルギー・ケアーとワーク(F.E.C+W)の自給圏」の確立をテーマに民主的で平和で豊かな地域社会づくりに向けた活動を行ってきました。
 この歴史的な転換点にあたって、私たちが今まで行ってきた活動と「人」を中心とした希望を未来に託せるよう政策としてまとめ公開・発表し各政党・候補者に提案することにしました。
 その上で、私たちの政策について各政党・候補者から見解をお聞きしその内容を公表することで、日本の将来が大きく変わる選挙に対して、国民一人ひとりがこれからの「国家体制」「地域社会」「生活」「福祉」「平和」のありよう考え選択できるよう寄与することを意図しています。
 国民の「知る権利」が徐々に閉ざされようとしている中で、私たちの政策提案が少しでも国民の政治的な判断材料につながれば幸いです。

<政策提案>

1.食料自給力の向上と食の安全を守るために

(1)TPP条約締結に反対します。
 2015年10月5日TPP条約の「大筋合意」がなされました。TPPの大筋合意で影響を受ける農林水産物の中で、特に影響が大きいのが、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の原料の5項目です。このため、国会は日本の交渉参加を前にした2013年4月、政府に対して農林水産物への配慮を求める決議を行いました。しかし、合意内容は、国会決議である「除外又は再協議」とした米など主要農産品の輸入枠のTPP設定、関税の大幅削減や一部関税撤廃、豚肉・牛肉のセーフガードの廃止等、農産物の重要5項目について、586品目のうち70%に当たる412品目が、関税撤廃の例外となりました。その他にもこれまで多くの懸念が表明されてきたISDs条項、自治体を含む政府調達の規定、国営企業の扱い等について、充分な説明が行われていません。今回の「大筋合意」は、明らかに国会決議に反するだけでなく、国民への説明責任も果たしていせん。
 その上で安倍内閣は、交渉参加以来2年余、国会決議が求める情報開示も、「保秘契約」を盾に拒否して秘密交渉を続けてきました。大筋合意の内容の詳細なる「情報公開」を国会において行い、広く市民に情報開示することを求めます。また、国民は憲法上、国に安定した安全な食料や暮らしを求める権利が保障されています。情報公開と市民参加の議論は民主主義の基本であり、とりわけ,市民生活のあらゆる側面に影響を与える可能性のあるTPPのような経済連携協定においては重視されなければなりません。情報開示と国民的議論なしに日本政府よる「署名」、国会での批准手続きに進むことに明確に反対します。
 
(2)食料自給力の向上を図ることを求めます。
 農林水産省の「2015年農林業センサス」によると全国の農業の就業者数は、10年前の前回調査に比べて19.8%少ない209万人で過去最低でした。平均年齢は、0.5歳上昇し66.3歳です。農業の担い手の減少と高齢化は一層深刻です。中山間地域では離農が相次ぎ、耕作放棄地の面積は42万4千㌶と5年で7%増え富山県とほぼ同じ面積となりました。このままでは、農家の生産性向上や後継者不足が深刻になります。
 ましてや、TPPによる農林水産物の関税の廃止や縮小により、わずか40%の食料自給率が大幅に低下する事を危惧しています。日本における農業はビジネスとしてではなく、「農村」「農民」一体として存在しています。農業問題は村の景観を含む地域問題であり、そこに人がいるという人の生存の問題として捉えるべきと考えます。
私たちは日本の自給率の低下は人間の生存としての地域の崩壊につながることを懸念します。それに対して、私たちはこれまでの国内の生産者と提携し実践してきた共同購入運動を強め、食料自給力の向上をすすめてきました。また、神奈川県の都市近郊農業を守り、生産者とともに私たちの住み暮らす地域に農業があり続ける生活空間づくりと、農的空間の文化的、福祉的、教育的な活用の検討と食のコミュニティ自治づくりをすすめています。
そこで、日本の「農」「地域社会」を守るためにも私たちの活動を踏まえた上で、食料
の自給力向上の施策を求めます。
 
(3)食の安全のために加工食品の原料原産地の義務表示とGM食品の義務表示の強化を求めます。
 食品表示法が、2015年4月に施行されました。新たに加工食品への栄養成分表示が義務化されました、が。一方で、長年の懸案とされてきた、加工食品の原料原産地の義務表示とGM食品の義務表示の強化については、先送りされました。食の安全の見地から憂慮すべきことと考えます。
そこで、消費者には、「知らせる権利」「安全である権利」「選択できる権利」「意見を反映させる権利」があります。今後も国に加工食品の原料原産地の義務表示とGM食品の義務表示の強化を求めます。
     

2.脱原発と自然エネルギーの普及、原発事故避難者への対応について

(1)速やかな原子力発電所の廃炉を求めます
 福島原発事故から5年が経ちました。放射能によって、大地や海を汚し、人を被ばくさせ取り返しのつかない状況を引き起こしました。また、未だにメルトダウンした核燃料がどこにあるのかわからず、その取り出しもできない、また汚染水漏れ、中間処理施設の場所もない、事故は収束されていません。ましてや、事故の検証も行われていない状況では原発の再稼働は許されるものではありません。
その上で、4月14日から16日にかけて熊本で大きな地震がありました。日本中いたるところに活断層があり、どこでも大きな地震が起きる可能性があります。未曾有の大災害を起こした福島原発事故の収束と検証を優先し、自然災害の発生の多い日本では原発の再稼働は止めるべきと考えます。2015年8月に川内原発を皮切りに原発の再稼働がすすめられていますが、私たちは原発の速やかな廃炉を求めます。
 
(2)自然エネルギーの普及を求めます
 私たちは、2010年からエネルギーの自給圏づくりを構想し2011年3.11東日本大震災を経て、2012年3月から秋田県にかほ市で風力発電を稼働させました。その実践を通じて、国の電力システム改革を踏まえて、「エネルギーを選択できる社会」づくりを基本として電力会社を設立し組合員への電気の共同購入を実現させてきました。
翻って日本の2030年のエネルギー計画は原発と火力で76%を賄う計画であり自然エネルギーは最大で24%として自然エネルギーの普及政策を後退させています。これは、福島原発事故前の政策に後戻りをしていると言っても過言ではあませんし、自然エネルギーシフトに舵を切っている世界の国々と逆行しています。ましてや、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出削減目標も世界で最低レベルの状況です。そこで、原発の廃炉とともに自然エネルギー普及促進のための施策が必要です。2030年には、自然エネルギーの構成比率を35%に高めるため、自然エネルギーの普及を促進させる施策を行うことを求めます。
 
(3)福島原発事故の避難者への支援の継続を求めます
 国は福島原発事故の避難者に対する帰還政策を打ち出し居住制限区域と避難指示準備区域について2017年3月を目標に避難指示を解除する方針を閣議決定しました。これによって自主避難者への住宅の無償提供が17年3月で打ち切られることが決められました。その結果、避難を続けたい人の経済的負担が増え避難が続けられなくなり、放射線量の高い地域でも帰らなければなりません。放射能に汚染された地域に帰還するかどうかは、避難者の自己決定に委ねるべきと考えます。ましてや、多くの避難者が「戻らない」、「まだ判断がつかない」としています。避難者が戻りたくない理由は、福島第一原発の安全性への不安、被ばくへの不安、医療環境、生活環境、家屋の荒廃、若い世代が帰ってこないなどさまざまです。
 そこで、避難者の事情を考慮し基本的人権を守るためにも支援の継続を求めます。
     

3.社会保障について

 日本の人口予測は2050年に1億人を割り込み9708万人が予測されており、構造変化として3人に1人が70歳以上という超高齢社会であり、1人世帯は約23%と予測されています。2015年版高齢社会白書によると、65歳以上の高齢者がいる世帯数は全国で2242万世帯。うち一人暮らしは573万世帯と25.6%に上ります。2000年比では5.9ポイント上昇しています。国立社会保障・人口問研究所は、未婚者や子どものいない世帯の割合が年々高まっていることから、20年後は高齢世帯の30%以上を一人暮らしが占めると予測され、大きな社会問題となり介護・医療費等社会保障費の急増が懸念されます。特に首都圏など人口集中地域は高齢者の実数が増加し、老人施設、病院などが大幅に不足する時代になります。
 また、地域での雇用形態も大きく変化してきています。2012年の神奈川県の統計では雇用者のうち約40%が非正規雇用(全国35.2%)。そのうち女性が70.2%です。相対的貧困率で女性32%、単身男性約25%、シングルマザーの貧困率48%、6人に1人の子どもが貧困となっています。非正規雇用の増加が貧困を拡大し、結婚できない人が多くなり、出生率が低下するという悪循環の状況になっています。人口減少の中、女性の就業率は高まり、保育園不足が起こっており子育て支援はますます必要となります。しかし、現状では待機児童問題は深刻ですし、共稼ぎでもワーキングプアーが問題となっており、就業と環境の改善が緊急の課題となっています。
 
(1)社会保障の充実を求めます
 2017年4月1日から消費税が現在の8%から10%に増税されることが検討されています。消費税の増税は「税の社会保障の一体改革」を具体化するために行います。社会保障と税の一体改革は、社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すものであり、2013年12月に法案として決定しました。政府の発表では10%にすることで「子ども・子育て」、「介護・医療」、「年金」の社会保障を充実するために充てるとされています。しかし、実際には財政再建の主たる手段を社会保障費の見直しとして、介護保険制度の切り下げに求めています。生活保護の削減、後期高齢者医療制度の保険料軽減措置の段階的廃止も打ち出しており、高齢者の貧困問題も増加し地域社会が破壊し始めていると言えます。また、政府が提唱している、1億総活躍社会や3世代同居、「50年後に1億人程度の安定した人口」という人口(出産)目標を立てるなどの諸策は、「個人と国家」の関係、特に女性の自由と人権に関わる大変危険な問題を孕んでいると考えます。
 そこで、社会保障費について切り下げではなく充実を図るとともに、自助だけではなく公助・共助によるセーフティネット機能を高めることで、女性が個人の権利として子どもを安心して産み育てる社会、高齢になっても不安なく暮らせる社会、貧困に陥っても抜け出せるような生活や教育支援等の制度事業の整備をすすめることを求めます。
   
4.安全保障関連法に反対し平和憲法を守ります
 私たちは、設立以来一人ひとりの命と暮らしを大切にし、「人間が人間らしく生きる社会」をめざし、市民参加型の民主主義モデルを地域からつくる活動を続けてきました。日本は世界唯一の被爆国であり、その悲惨な体験を二度と繰り返してはいけないとの思いから毎年広島平和集会への組合員派遣を実施し、未来を担う子どもたちに平和をつなげる活動を拡げてきました。
2015年7月16日、衆議院本会議において採決が強行され、可決された平和安全法制整備法及び国際平和支援法(以下本法)は、憲法9条の下で禁じてきた集団的自衛権の行使を可能にし、アメリカなど他国が海外で行う軍事行動に日本の自衛隊が武力行使をもって協力することに道を開くもので、多くの憲法学者が「違憲」であると表明しています。また、歴代の内閣では、憲法上許されないとし1972年の政府見解を踏襲しています。
 日本が自衛隊という実力組織を持ちながらも戦争をしない平和国家として国際社会で受け入れられてきたのは、平和憲法のおかげです。軍事力によらない平和構築の理念を壊そうとしているのが本法です。また、本法への政府説明は不明確な点が多く、説明責任を果たしていません。憲法解釈という重大な変更が、十分な国民的議論と手続きがないまま、国会で強行採決されたことは、民主主義の観点からも許されるものではありません。
 私たちは、先の侵略戦争への真摯な反省をふまえ、世界の平和と安定を望みます。憲法9条を持つことによって、世界中の平和を望む人々の間に築かれてきた、平和国家日本の信頼を破壊するという愚行をはっきりと拒否します。世界の中でも、立憲主義や平和主義が高く評価されている「日本国憲法」は、私たちの国の基盤です。一人一人の人権の尊重と、平和と民主主義を貫く姿勢に立ち、現在の平和憲法に立脚した、安心で安全な暮らしが保障される憲法を引き継ぎ、同法の撤回、廃案を強く求めます。
                                      以上
 

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